抗がん剤治療に関する様々な情報が錯綜し、かえって不安に陥ってしまう患者さんも多いようです。毎日の診療で患者さんに説明していて気づいたことは、多くの患者さんが同じような問題で不安を感じているということです。そこで、「安心して抗がん剤治療をうけるための12ヶ条」を作りました。
第1条 病気を理解する
「乳がん、私らしく生きる」で詳しく説明されていることです。乳がんという病気を正しく理解することが、安心の始まりです。
第2条 治療を理解する
抗がん剤などの薬物療法について、「乳がん、私らしく生きる」ほど正確、丁寧で、わかりやすく書かれた書物は他にありません。お友達にもお勧めしてください。
第3条 副作用を理解する
「乳がん、私らしく生きる」をお読みになった読者は、たぶん、抗がん剤の副作用については正しい知識をお持ちのことと思います。
第4条 副作用の対処方法を知る
副作用は我慢するもの、という考え方は間違っています。具体的な対処方法をよく理解しましょう。
第5条 健康食品、代替医療におぼれない
百害あって一利なし、と言っては言い過ぎでしょうか。
第6条 普通の生活を送る
乳がんになったからと言って、抗がん剤治療をしているからと言って、日常生活に禁止事項は何もありません。旅行、仕事、外出、買い物、体調がよければ何をしても大丈夫です。もちろん、食事の内容も普通でOK。乳製品がいけないとか、肉はいけない、という人がいますが、それは、あり得ません。また、がん患者は風邪を引いてはいけない、というのも間違っています。風邪を引くのはしかたないこと、手洗い、うがいの励行など、普通の注意は必要です。
第7条 なんでもがんと結びつけて考えない
腰が痛い、骨転移かしら?と心配する患者さんに、よく話を聞いてみると前の日に久しぶりでした庭の草むしりが原因、と言うこともあります。すべてががんと関係するわけではありません。
第8条 先々のことを考えない
余命のところにも書きましたが、先々のことはわからないのです。私だって来年の今ごろ、元気で患者さんを診ているかどうかもわかりません。一日、一日を充実して過ごすことが何よりです。
第9条 近い時期に楽しいことを計画する
今週末は何をしますか? あじさいが咲くことには鎌倉でも行きましょうか、桜が咲いたら京都にいきましょう。来週は、浜名湖花博にいきます、など。
第10条 いい友達と付き合い、家族を大切にする
やはり、信頼できる友達、支えあう家族が大切です。病気のこと、治療のこと、家族とよくよく相談して、いっしょに考えていきましょう。
第11条 仕方ないこと、済んだことにこだわらない
あのとき、抗がん剤をやっておけばよかった、もっと早く病院に行けばよかった・・・、確かにそうかも知れませんが、すんだことはすんだこと、今できること、これからのことを考えましょう。
第12条 納得するまで聞いてみよう
正しい情報は正しい治療の第一歩です。正確な知識を持つことが安心につながります。わからないことがあったら遠慮しないで、納得いくまで担当医や看護師に尋ねましょう。インフォームドコンセント、セカンドオピニオンは患者さんの権利です。